助けあいジャパン

June 10, 2012

Mr. Bellpepperのプロット(改定前メモ)


NOVEMBER 6, 2006


Mr. Bell-Pepper プロット原案(再改)

Mr. Bell Pepperが口を開いた。
いつも彼の質問は唐突だ。

「ゲームをしないか?」
「今度はどんなゲームだい?」

「君は、どんな状況でもある程度の距離を泳ぐことができるかい?」
「距離にもよるけれど、たぶん、そこそこは泳げるさ。」
「たぶん、かい?君はいつでも、そう言うな」
「いや、{たぶん}絶対さ」

「僕の言う条件で100m泳げたら、50万ドル。」

えっ?たった100mかい?

そうだよ、100m、成功すれば50万ドルだ。


「このゲームに参加して、僕の話を聞いてくれれば、その時点で10万ドルだ。その話にのって実際に泳ぎ出せばさらに10万ドルだ。ただし、トライ出来なければ逆に僕に30万ドル払ってもらう。そして、実際に成功すれば、僕が君に30万ドルだ。悪い話じゃないだろう?フェアなゲームだと思うが。」

「もう一度確認しよう。僕は、僕が選んだ条件で好きなときに好きなように100m泳げばいいんだね」

「そのとおり。君はそこで泳ぐだけでいい。」

不敵に哂うMr. Bell Pepper


ただ100m泳ぐだけという対価で50万ドルは悪くないベットだけれど、命をかけるほどのももんでもない。なあMBP、この話はいつもの君のゲームにしては随分安直すぎる感じがする。


いったい何を企んでいるんだ?どうせ「身体に鉛を50キロ着けて泳ぐ・・・みたいな条件とか、悪天候の海とか、急流を泳ぐみたいな話なんだろう。

「No, そうじゃない。僕の出す条件は一つ。そこを泳ぎ切ること、それだけだ。それを、いつどうやるのかを決めるのも君自身だ。

「自分で決めて良いんだな。OK,面白そうだ。もちろん僕には自信がある。」

「皆、そう言うのさ。自信満々にね。でも、それが出来たのは今まで2人と1匹だけだった。年老いた漁師と盲目のギタリスト、それに、飼い主を喪ったばかりのメスのレトリバーだけだ。


厳密に言えば…その先は知らないほうがいいだろう。
MBPは冷ややかに嗤った。

「えっ?たった100m泳ぐだけだろ?」

「そうだよ、たった100m泳ぐだけだよ」と、含みのある言葉を復唱するMr. Bell Pepper

☆☆☆☆☆☆

不敵に哂うMr. Bell Pepper

「ゲームを始めよう!」

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11月の新月の夜だ。ちょっと肌寒いが絶望的なほどの寒さではない。漆黒の闇の中。太平洋上の大きな波のうねりの中に移動させられたことに気づいた。腹の底に共鳴するような超低音の黒潮の響きを感じる。乗っているのは小さなゴムボートだ。周囲を見渡してみると、小さいながらも十分な装備もあるようだ。舵なしで潮に流されているボートは上に下に、背丈のおよそ2倍、4m位のうねりの中にいる。この海域では、ごく静かなのうねりだ。せり上がってうねりの頂上にいると、底のほうは絶望的なくらい深く暗い闇の底に見える。それ自体が、根源的な恐怖。畏怖。何に対しての?

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そうだな、確かに怖いさ。
でも大丈夫。たった100m泳げばいいんだろ。そのくらいできるさ、「必死になれば」。

ははは、そうだろうな。「必死になれば」そのくらいできるだろう。勇気を振り絞ってね。MBP、僕も「君なら出来る」と思ってるさ・・・

★★★★★

漆黒の闇、深いうねりの中で、僕は何度か海面を覗き込んだ。夜の海、うねりがある。水温だって決して十分とはいえないだろう。今まで経験したことがない状況で、海に入るリスクをかけることはない。

恐怖?YES
後悔?Yes, but...

もちろんゲームを降りるという選択肢が一番現実的な解決方法だろう。命をかけるほどのものでもないだろう。

No, but...

僕は朝が来るまで待つことに決めた。あと数時間この海の上で我慢すれば夜が明けるだろう。

Mr. Bell Pepperは、何も言わない

★★★★★

でも、まだ君は本当のことを知らない・・・と、MBPがつぶやく。



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水平線がぼんやりと明るくなったと思ったら、急に周囲の海の色変わった。漆黒から濃紺、そして乱反射する波面。太陽があがった。
~~~~~~~~~~~~

やめるなら今のうちだよ。実際の深さをまだ君は知らない・・・と、Mr.Bell Pepperがつぶやく

教えてあげよう。君は今、日本海溝の上にいるのだ。
最深部が8020mの日本海溝の真上の海上にいる。

うねりの底の暗黒の下は、水深8020mの海底があるんだ。

十分な時間もある。君が100mは泳げるんだろ。「どんな状況でも」。
たった100mだよ。
嗤うMr. Bell Pepper.

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僕とMr. Bell Pepperの本当のゲームは、ここからが本番だったのだ。



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