助けあいジャパン

May 26, 2011

「ブラック・スワン」


研究日。午前は病棟回診など。午後からいつもの施設在宅往診をしてからセンター南の保育園へ。0歳から5歳までの子供達の保育園での健康診断。かみさんにナースとして手伝ってもらい、二女ゆっつんも見学参加。可愛い盛りの元気一杯の天使達のオーラを貰った。ああ、楽しい楽しい。終了後かみさんは碑文谷のジムへ移動、僕とゆっつんは隣の109シネマで待望の「ブラック・スワン」ナタリー・ポートマン主演(2011アカデミー賞主演女優賞)へ。震災のどさくさでやっと今になって観に行く気になった。

ナタリー・ポートマンの美しさ。本物のバレリーナと見紛うほどのバレーのスキルと身体の美しさ。どうもbody doubleの吹き替えらしいけれど、ここまで美しくCG映像化できればその真偽は全然問題じゃない。ナタリーの気高くて透明感のある美しさは角度によっては若い頃のオードリー・ヘップバーンに似ている。演じているのは役作りのプレッシャーの中で精神を病んでいくプリマドンナの痛々しい姿。決してあの時代のオードリーヘップバーンは演じなかった(演じさせなかった)であろう汚れ役。

解離性人格障害ともいえるし、強迫神経症とパニック障害の混在した形の境界型人格障害ともいえる。母子分離が上手くできずに、性的に抑圧されて育ってきたクリスタルのように繊細な女の子のストーリーだ。ピュアでバレリーナとしてのエリート(でも、すでに様々な心理的葛藤を持っている)新星のプリマドンナが、(そのままの人格とスキルで演じられる)ホワイト・スワンだけでなく、(彼女の知らない精神世界の)ブラックのスワンも踊らなくてはならない、という苦悩。この映画はいわゆるサイコロジカル・スリラーだしホラーでもある。場面の所々に様々な非常に芸の細かい映像的な仕込みがしてあって、その緻密な作り込みにも感嘆した。画面からその「痛い」感じが伝わってくる。性的な描写(ダイレクトでないだけにある意味スゴくエッチだ)やグロテスクだったり暴力的で反社会的な(成熟していない子供達には適切ではない:R15)描写も多いけれど、ある意味この作品の根底には「性的なもの」や「ラディカルなもの」があるわけだから避けては通れない。それを真っ正面から表現した監督と演出の力量だと思う。僕は根っからスケベな人間なので、こういう表現は「正直」な感じがして嫌いじゃない。ストーリーは複層的であるけれど流れはわりと単純で、最初のほうで結末は誰もが想像できるのだけれど、悲劇的なエンディングなのに絶望的ではない・・・という気持ちになる。そこが見事で上手い演出。美しくストイックで痛々しいくらい繊細ですごくセクシーな・・・ナタリーの演技は素晴らしく、まあ今年のアカデミー主演女優賞は順当かと、僭越ながら。
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